大層な表題を付けてしまいましたが、色々試行錯誤を続ける中で推測から理解に至って来たと思われる事をつらつらと書いてみようと思います。因みに僕自身は大学も出てませんし物理学や音響学の勉強はした事がありませんしあくまでこれ迄の経験則と観察から出て来た今の時点での考えなので専門家の方やその他マニアの方々からのご意見、ご指摘大歓迎です!
結論から言うと、アコースティックギターの製作においての音作りの本丸は「各弦の出音のスピードのコントロール」ではないかと思っています。 ちょっと何言ってんだ?になるかも知れませんが、僕の乏しい国語力で説明してみます。
たまにギターの音の評価として「反応が速いもしくは右手の入力に対して出音がセンシティブである」と言う言い方が有ります。取り敢えず一例としてlow E(6弦)の開放の音で考えてみます。 右手の入力にたいして反応が速いということは右手の指先ないしは爪から弦がリリースされた瞬間から振動を始める弦の振幅が出す音のゼロから音が出る瞬間までの立ち上がりが速いという事になると思います。 ただ、注意しなければいけないのは、低音は波形は幅広く、弦の振幅自体も大きくゆっくりだという事です。要は「低音は一定以上速く出力出来ない」という事です。つまり6弦の開放音の82.407Hzの音だけで考えると一定以上の速さで音を出力することはできないと考えます。では、個体によって速く感じたり遅い、若しくは「クッション感がある」と感じるのはなぜか? その答えは基音の82.407Hzに付随してくる倍音だと思っています。そもそもギターの音は基音だけではなく必ず一定の倍音を含んでいます。と言うか倍音を含ませないのは不可能です。 問題はどのあたりの周波数をメインに基音に乗せるかです。高域であればある程鳴り始めからピーク迄の時間が短い=反応が速いので、高域の倍音を付加すればする程弾いた時に体感として出音が速くセンシティブに感じられると考えます。ただ、周波数帯によってはギラギラとした金属音で耳に心地良くなかったりアタック音や左手側の弦を擦る音が聞こえ過ぎてしまったりとそのバランスはとても難しいと思います。更に音色の事を考えると、中音域の倍音もどれくらい乗せるかもとても重要ですね。真ん中(中音域)が凹んだいわゆるドンシャリにせず暖かみや味のある音を出そうとすると中音域は非常に重要な要素になってくると思います。 要は、低音については反応が速くセンシティブでレンジ感も広く感じる様にするには反応速い高域倍音を多めに付加してやれば良いと言えると考えます。 高音弦に関しては、そもそも速いので更に速い高域倍音を強調するとギラついた金属音に聴こえてしまいますので、ある程度速度の遅い中音域や中低音域を基音に付加してやれば太さのあるふくよかな音になると思います。
まぁ文章にしてみると当たり前の話なのですが、この「各弦の出音の速さ≒音色」という発想に至り、色々と実験や観察をしてやっと確信になる迄に18年掛かりました笑 「≒」としているのは、あくまでも今話しているのは
弦振動の始まり→振動のピーク→出音、音色
と言う楽器そのものの振動という非常に大きな要素をすっ飛ばしているからです。
しかしこの構造と言うか弦振動と音色の関係性がある程度の解像度で理解出来れば例えばナットやサドルなどの弦に対する接地面積、モーメントの方向性や、振動を受けてのブリッジやトップ、バック、ネックなどの理想的な動き方や関係性などを考える時の指針になると考えています。なので、昔の様にトップの厚みやブレーシングの削り、ネック整形などのあらゆる箇所の剛性コントロールの場面で迷ったり考え込んだりする時間がかなり短くなりました。
では実際に、この感覚でギターを製作して音がコントロール出来ているのか?という事ですが、、、、
どうなんですかね?笑
僕自身では「ココをこうしたら音はこうなる」みたいなのは昔に比べてかなりの確率で実現できる様になったと思っているのですがこればっかりは実際に弾いていただいてご意見頂かないとわかんないですよね〜笑
と、いう事でお店で見かけた際は、展示会で見かけた際は是非お手に取って弾いてみて下さいね!