フレットの中身

この数週間の間、サイトのメンバーにてフレットについてザックリと大まかに紹介してきました。クラシックギター製作に携わっているだけでも、修理などで色々な形状や硬さのフレットに出会う機会があります。 細かい体験談を紹介してしまうと長くなってしまいますので、ここではフレットの素材に対してもう少し踏み込んでみたいと思います。

一般に知られているフレットやGMJのトークで紹介されたフレットは合金であり、その細かな中身を知るにはフレットを製造するしかない気もします。しかしながら、私にはそのような余裕と根性・追求心を兼ね備えていない為に結局は理想のフレットを委託してしまうのが現状ですね、、、高校は金属工芸科でしたが鍛金・彫金・鋳造がメインでしたのでフレット合金についてはさっぱりわかりません。

そこで、委託するにあたって気になったことはメモしております。私の使用しているフレットについてご紹介いたします。

■ニッケルシルバー(洋銀・洋白)フレット

特性:

一般には適度に柔らかく硬くもある加工に優れている材質です。柔らかさから摩耗などにより擦り減り、場合によっては擦り合わせなどでフレットの面を調整していきます。

比較的、昔から使用されておりトラディショナルな音色が好きな方には好まれる傾向にありましたが、最近では高さのある形状(1,3mm等)に打ち替える方々も増えております。

スペイン語では「Alpaca(アルパカ)」とも呼ばれている素材ですが「カピバラ」ではありません。それはさて置き、個人的には試奏時に程よい滑り具合と輝きすぎないモダン仕上がりが好きで使用しております。

合金:

・銅 61~67% (銅は硬貨やメダル等に使用されています)

・ニッケル16~16.5% (銀白色の鉄族、耐食性が高いため装飾用クロームメッキ等に使用されています)

・鉛0.1%以下 (ネットでは錆で覆われた表面は鉛色・青灰色とありましたが何故合金に含まれているのかは分りません)

・鉄0.25%以下 (いわゆる鉄ですね、湿度で直ぐに錆びます)

・マンガン0.5%以下(耐摩耗性・耐食性を付加するそうです)

・亜鉛 (残部のほとんどで、湿った空気中で錆びるそうです)

※通常、ニッケルシルバーというと銅50~70%・ニッケル5~30%・亜鉛10~30%

と表示されることが多いですが、メーカーによって色々と混ざっていそうですね。私のフレットの合金は、金属メーカーに依頼した後に加工メーカーである三晃製作所にて仕上げてもらっております。

硬度:ニッケルシルバーはおおよそ硬度が110~200くらいの範囲で製造されており私は160と比較的柔らかい物を使用しております。フレットに関しては素人のため、メーカーさんに硬度を上げるには合金の配分をか変えるのですか?と質問しましたが、基本的には合金の配分は同じものを使用しており「焼鈍(しょうどん)」という焼き鈍し作業にて硬度を造り分けているそうです。焼鈍とは金属の熱処理の一つであり、切削やプレスなどの加工工程で発生した残留応力や加工硬化などを取り除く作業。この作業を行った金属は結晶組織が均一になって柔らかくなり、加工性や靭性(じんせい:粘り)が向上するそうです。

私は楽器そのものがMade in Japanでありたい気持ちが強く、糸巻きは後藤ガットさん、フレットは三晃製作所さんのものを使用しております。日本の産業に少しでも貢献したいですね。勿論、ギターの原材料である木材・サドル・ナット等は海外から取り寄せているのは楽器のルーツにほかなりません。しいて言うならば、弦が日本製で良い物ができてくれば嬉しい限りです。

ステンレスフレット(鉄が主な合金であり、ステンレス鋼はクロムが不導体皮膜を形成して錆をしょうじなくするらしい)は、ニッケルシルバーよりも寿命が長いので良いとは思いましたが、トラディショナルな私のスタイルには眩しすぎます。音色も私の楽器だとモダンすぎる気もしております。

今回はこの辺で

  • 1828年のバロックギター。フレットを打ち替えたかは不明ですが、かなりすり減っているフレットです。
  • 真鍮フレットといえば最近のは銅にニッケルを含ませた合金が支流ですが、修理の時に頂いたスペイン製のギターについていた真鍮フレットです。ところどころ傷があり使えませんが、修理用にとってあるもの。凄く柔らかいフレットです。
  • フレットを加工し易いように、丸く搬送された状態から真っすぐ引き延ばす作業と、ノコ溝に食い込むよう脚に鎚跡を入れる作業。