新作ギターが出来上がりました。海外のギターショップからオーダー頂いていたものです!
書きたいネタは山ほどありますが、書く時間がなかなか作れず投稿がご無沙汰になってしまっています。
今作のテーマは、フレットです。
僕個人の見解なので、ご了承下さいね。
①高音弦側のみ、ラウンドエッジ(ボールエッジ)加工
ラウンドエッジ加工は、鉄弦の世界では多くの高級ギターに採用されています。
フレットの端を一つ一つヤスリで丸めていくので、とても手間のかかる処理ですが、
下記のメリットがあります。
・乾燥により、フレットのバリが出てきたときでも、指へのあたりが滑らかになり、痛くなくなる。
・角を斜めに落とさず丸める事で、弦幅を稼ぐ事ができる。
・見た目がオシャレになる
デメリット
・手間がかかる事(コストが上がる)
・完全に足を無くしてしまうと、ギターの乾燥の度合いが分かりにくくなる。
・完全にフレットの足を切って見えなくするとポジションが分かりにくくなる。
↑
三つ目のデメリットについては、そういう指摘を受けましたが・・そんなのはすぐ慣れる という声もあります。
エレキやアコギの場合は、ネックを握りこんで押さえるので、
フレット端の処理の重要性は増しますが、
クラシックギターの場合は奏法が異なり、高音弦側のみ手が当たる弾き方になります。
今回の試みは、高音弦側のみにラウンドエッジ加工をすることで、
デメリットを最小限にし、メリットを最大限に引き出すというものです。
②20F EVO GOLD採用
EVO GOLDという素材はジェスカーフレットが開発した合金で、
GJMにも加入している小林良輔さんから教わったのですが・・・
下記の特徴があります。
・素材の色がGOLDカラー
・ニッケルを使わない合金である為、ニッケルアレルギーの人でも安心して触れる。
・通常のフレットによく使われるニッケルシルバー製のものより、やや硬く、ステンレスよりは柔らかい。
・値段が高い
クラシックギターの構造の場合、20Fをつけると通常の設計の場合サウンドホールの上まではみ出してしまいます。高音は土台がしっかりしていないと音が出にくくなります。見た目的にも、とって付けた感がでてしまい、美しさを損ねている気がします。
20Fがあることにより、19Fの位置が分かりにくくなるから邪魔!という声もあります。
20FをEVO GOLD素材にすると、下記のメリットが生まれます。
・20Fが金色なので、19フレットとの見た目の違いが出て位置が分かりやすくなる。
・素材がシルバーニッケルより硬いので、本来音が出づらい20Fの音が少し出やすくなる。
実際の所、二つ目の効果は微々たるもので・・やっぱり音は出づらいのですが。笑
小さな工夫ですが、見せた方からは結構喜ばれてます!
20Fが必要かという議論は賛否両論ですが、個人的には付けておいていいのでは と思っています。
今は20Fを使う曲はほとんどありませんが、作曲、編曲が盛んな今の時代ですから、
今後増える可能性があるからです。
③ハイフレットの採用
ジェスカーの 55090 を使っています。
メリット
・セーハが押さえやすくなる。
・ビブラートがかけやすくなる
・フレット交換までの寿命が長くなる。
デメリット
・速弾きのときなど、演奏性に支障がでる場合がある(ギタリストからのご意見です)
・しっかり押さえ込んだ時に僅かに弦の張力が上がるので音程が上がる→通常のフレットでも、張力が上がるほどは押さえ込む事は通常ないので、デメリット というほどではないのでは というご意見をいただきました。その通り!(笑)ご指摘ありがとうございます!
・通常のフレット端を斜めに落とす加工の場合は、
フレット上端の長さが僅かに短くなってしまう(弦落ちしやすくなる)
個人的には、デメリット部分は理論上の話なので認知できないレベルかなと感じておりますが、人によって好みは別れますね。
多くの方からの反応をみると、ハイフレットには好意的な意見が多いように感じます。
④ツイストネック
6弦のハイポジション側を多く削り、高さを低くします。
下記のメリットがあります。
・1弦側は、ハイポジションの演奏のしやすさを考えると高さが必要だが、
6弦側は必要ない。
・6弦側を低くする事で、1弦のハイポジションが見えやすくなる。
・1弦側は、高音の音が出やすくする為に、黒檀の厚みを出した方が音にも有利に働く。
①~②の工夫に関しては、一応今のところは僕の思い付きですが
人間、案外考える事は一緒なのでどこかでやってる方はいるかもです。笑
④については、知人ギタリストにみせてもらったシュテファン・シュレンパーの設計に習わせて頂きました。
モノづくりをしていると、アイデアの使用は結構気を使います。
より良いギター、自分らしいギターを作りたい という一心なのですが・・・
せっかくいい設計考えたのに、他の方が特許を申請されて通ってしまい、
せっかくのアイデアが使えなくなったり。良い考え思い浮かんだ!と使っていたら、他の誰かが既にやっていて、パクリと言われたり。
願わくば、足の引っ張り合いではなく、
学び合い、育ち合い、正しい切磋琢磨が出来たら と常々思っています。
幸い、僕の周りには本当に尊敬できる素晴らしい製作家が沢山います。
皆、必ずしも同じ方向を向いているわけではありませんが、少なくとも僕は、皆様の素晴らしい腕に焦りを感じつつも自分を高めてくれる素晴らしいギター&製作家にいつも感謝感謝です。その中で、少しずつ自分らしさを見つけられてきているような気がします。